【企業事例】「違いを力に」多文化共生を社内から実践するGTN

-企業事例-
Entrepreneurship Case Studies
株式会社グローバルトラストネットワークス
外国人とともに働き、暮らす社会を支える
株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN)は、外国人の日本での暮らしを、住まい・通信・金融・仕事など、さまざまな分野から支援している企業です。
2006年の設立以来、外国人専門の事業を20年にわたり展開し、2026年7月時点で累計利用・支援者数は75万人以上、4か国24拠点に事業を広げています。
また、GTN自身も外国籍スタッフが全体の70%を占める多文化企業です。
外国人を「支援する側」であると同時に、自らもさまざまな国や地域にルーツを持つスタッフとともに働き、多文化共生を社内で実践していることも、GTNの大きな特徴です。
今回は、ABCネットワークの理事企業でもあるGTNについて、外国人材とともに働く企業としての取り組みと、長年の外国人支援から培ってきた経験をご紹介します。
辺久 奈印
株式会社辺久 代表取締役 / 創業者
一人の外国人の「部屋を借りられない」から始まったGTN
GTNの原点は、2004年にさかのぼります。
代表取締役社長の後藤裕幸氏が、部屋探しに困っていた一人の外国人から「保証人になってほしい」と頼まれたことが始まりでした。
同じように住まいに困っている外国人の保証人を引き受けていくうちに、その人数は約20名にまで増えました。
「外国人というだけで、住まいを借りることが難しい人がこれほどいる」。
個人で支援することには限界があるなら、それを社会の「仕組み」にしよう――。
その思いから、2006年にGTNが設立され、外国人専門の賃貸保証、賃貸仲介、生活サポート事業がスタートしました。
住まいから、通信、金融、仕事へ
創業時の「住まい」から始まったGTNの事業は、外国人が日本で生活する中で直面する課題に合わせて広がっていきました。
2014年には外国人専門の人材紹介事業を開始。2015年には外国人専門の携帯電話サービス「GTN MOBILE」、2017年には外国人専用クレジットカード、2019年には特定技能外国人の登録支援事業、2021年には外国人支援サービス「GTN Assistants for Biz」へと、支援領域を拡大しています。
現在GTNが掲げるミッションは、
「国を越え、共に生きるすべての人に、豊かな暮らしを。」
住まい、金融、通信、仕事といった生活の基盤を支え、国を越えて暮らす人が自分らしく生きられる社会を目指しています。
外国籍スタッフ70%。GTN自身が「多文化企業」
GTNを企業事例として注目したい大きな理由が、同社自身の人材構成です。
2026年7月時点で従業員数は596名。約20の国・地域にルーツを持つスタッフが働き、外国籍スタッフは全体の70%を占めています。
最大25言語に対応できる体制を持ち、日本人と外国人が一緒に働くことが、GTNでは特別なことではなく日常になっています。
外国人材を外部から「支援する」だけではありません。
自らが多国籍の組織をつくり、異なる文化や価値観を持つ人たちと一緒に働く。
そこに、GTNならではの強みがあります。
「違いを力に」――多様性を活かす
GTNの採用サイトでは、会社のカルチャーを表す言葉として、
「違いを力に」
という価値観が掲げられています。
約20の国・地域のメンバーが働く中で、国籍、文化、価値観の違いをなくして一つに合わせるのではなく、それぞれの違いを強みとして活かしながら事業を進めることを大切にしています。
実際にGTNで働く外国籍社員からも、多国籍のチームで互いの文化や習慣を共有し、異なる視点やアイデアを仕事上の意思決定や問題解決につなげていることが紹介されています。
「外国人スタッフに日本のやり方を覚えてもらう」だけではなく、日本人側も違う文化や考え方から学ぶ。
多文化の人材が働くこと自体を、組織の価値に変えている事例といえます。
国籍ではなく「その人自身」を見る採用
GTNの考え方は、採用にも表れています。
同社の新卒採用では、外国籍学生と日本人学生では抱えている不安や背景が異なることを前提としながら、一人ひとりに向き合った採用を行っています。
社内の共通言語は日本語ですが、外国籍人材についても、日本語の流暢さだけを一律の基準として判断するのではなく、自分の意見を伝えられるか、どのような価値観を持っているかなど、その人自身を見ることを重視しています。
また、入社後にはオンボーディング研修や他部署研修、定期的な1on1などを設け、一人ひとりの成長や挑戦を支える仕組みも整えています。
外国人材を「労働力」だけとして見ない
日本では人手不足を背景に、外国人材への期待が急速に高まっています。
しかしGTNが重視しているのは、外国人を単なる人手不足を補う「労働力」として捉えないことです。
後藤社長はGTNの代表メッセージの中で、外国人も感情や文化、家族を持つ一人の「人」であり、その視点から受け入れることが共生社会の出発点だという考えを示しています。
外国人材を採用すること自体をゴールにするのではなく、
「日本で安心して暮らし、働き続けられる環境をどうつくるか」
まで考えること。
外国籍スタッフが70%を占めるGTN自身の組織づくりにも、その考え方が表れています。
「採用できたら終わり」ではない。生活まで支える理由
GTNが20年間外国人と向き合う中で蓄積してきたデータからは、外国人材の受け入れについて重要なことが見えてきます。
GTNには2025年に年間約20万件もの生活相談が寄せられています。
来日前後には住まいやライフライン、契約・手続きについての相談が多く、生活を始めると設備の使い方や生活ルール、その後はゴミ出し、騒音、近隣とのコミュニケーションなどへと相談内容が変化していきます。
つまり、外国人材を採用し、来日してもらえば受け入れが完了するわけではありません。
仕事以外の「生活」で困ってしまえば、安心して仕事に集中することも難しくなります。
住まい、通信、行政手続き、医療、地域での生活なども含めて支えることが、結果として外国人材の定着・活躍を後押しするうえでも重要です
これは、これから外国人材を採用する企業にとっても重要な視点です。
来日前の教育から、採用、定着、活躍まで
2026年7月には、GTNグループの外国人材事業を担う「GTNキャリア」が本格始動しました。
海外現地での日本語・日本文化教育や職業訓練といった来日前の段階から、企業とのマッチング、採用、来日後の生活支援、そして定着・活躍までを一貫して支援する体制です。
GTNがこれまで培ってきた住まい・通信・金融・生活支援と人材支援を組み合わせることで、「採用する」だけではなく「長く活躍できる」環境づくりへと支援を広げています。
企業だけでなく、地域全体の多文化共生へ
GTNの取り組みは企業や外国人個人への支援だけにとどまりません。
2026年9月1日には、自治体向けサービス「GTN Assistants for Public」の全国展開を開始しました。
災害・行政情報の多言語化、生活情報、AIによる多言語相談、外国語対応可能な医療機関の検索や医療通訳などを通じて、外国人住民と自治体のコミュニケーションを支援する取り組みです。
外国人材を受け入れる企業だけではなく、その人が暮らす地域や自治体まで含めて環境をつくっていく。
GTNの事業は、「外国人支援」から、外国人と日本人がともに暮らす社会の基盤づくりへと広がっています。
20年の先に目指す「次の当たり前」
2026年、GTNは創業20周年を迎えました。
創業当時は、外国人専門の賃貸保証そのものが珍しい時代でした。
そこから20年。
外国人専門で20年、累計利用・支援者数75万人以上、4カ国24拠点、外国籍スタッフ70%という企業へ成長しました。
一方、後藤社長は20周年に寄せたメッセージの中で、かつて「支援される側」と捉えられることの多かった外国人が、現在では日本の社会や地域をともに担うパートナーになっていると述べています。
外国人材を特別な存在として扱うのではなく、国籍や文化の違う人が一緒に働き、暮らすことが「当たり前」になる社会へ。
GTNが20年間取り組んできたことは、これから外国人材を迎えようとしている多くの企業にとっても、一つの参考になるのではないでしょうか。
ABCネットワークより
外国人材の採用というと、在留資格や採用方法、日本語能力などに目が向きがちです。
しかしGTNの取り組みから見えてくるのは、採用はゴールではなくスタートであるということです。
働く人を「外国人」という属性だけで見るのではなく、一人の人として向き合うこと。
文化や価値観の違いを問題としてなくそうとするのではなく、組織の力として活かすこと。
そして、仕事だけではなく、日本で安心して生活できる環境まで考えること。
外国籍スタッフが70%を占めるGTN自身の職場と、75万人以上を支援してきた経験の双方から、外国人材が長く活躍できる企業づくりのヒントを見ることができます。
ABCネットワークでは今後も、外国人材とともに成長する企業や、外国人材の活躍を支える企業の取り組みを紹介していきます。

