【外国人材・企業事例】地域に根ざし、人を大切にする店づくり|多福楼グループ

-企業事例-
Entrepreneurship Case Studies
多福楼グループ/有限会社デビスエル
地域に根ざし、人を大切にする店づくり
川崎を中心に中華料理店「多福楼」を展開する有限会社デビスエル。
多福楼グループでは、「家族で行きたい」「仕事帰りに寄りたい」「一杯楽しみたい」と思える、地域に親しまれる町中華を目指して店舗づくりを行っています。
料理についても、町中華の基本となる出汁(スープ)を大切にし、調味料はできる限り無添加を目指すなど、身体や心にやさしく、何度でも通いたくなる味と店づくりを基本としています。
今回は、2026年8月31日にNPO法人アジアビジネス共創ネットワークが開催した暑気払い交流会の会場としてご協力いただいた多福楼 川崎本店をご紹介します。
辺久 奈印
株式会社辺久 代表取締役 / 創業者
多福楼グループ/有限会社デビスエル
ABCネットワークでは、外国人材とともに働く企業・店舗を訪ね、採用のきっかけや職場での工夫、実際に働く中で感じていることなどを紹介していきます。
第1回は、川崎を拠点に中華料理店「多福楼」などを展開する有限会社デビスエルです。
多福楼では、2007~2008年頃から外国人スタッフを採用し、日本人とともに中国やミャンマー出身のスタッフが店舗を支えてきました。
長年にわたり多国籍のスタッフと働いてきた中で感じていることや、職場づくりで大切にしていることについて、代表 鄭斌(ジョン・ビン)社長にお話を伺いました。
川崎から広がる「多福楼」
多福楼グループは、川崎本店をはじめ、大森、武蔵中原、渋谷、十条、御茶ノ水などに店舗を展開しています。
川崎本店は川崎市川崎区砂子にあり、多福楼グループを運営する有限会社デビスエルも同じ川崎区砂子を拠点としています。
店舗ではランチから宴会まで幅広く対応。「チャ~ボン多福楼」では、パクチーをはじめとする緑野菜を取り入れた料理や豊富なドリンク、ノンアルコールメニューなど、さまざまな利用者が楽しめる店づくりを行っています。
「地域」と「人」を大切にする経営
多福楼が掲げているミッションは、次の3つです。
- 社会・地域に貢献する
- お客様と従業員を幸せにする
- 地域一番店を目指す
料理を提供するだけではなく、地域に必要とされる店舗を目指し、メニュー開発や店舗運営にもさまざまな工夫を重ねています。
外国人材の採用・雇用・定着という視点から見ても、特に印象的なのが、「お客様と従業員を幸せにする」ことを経営のミッションとして掲げていることです。
今回のインタビューでも、国籍にかかわらず一人ひとりのスタッフとの関係を大切にする、多福楼ならではの考え方が随所に表れていました。
素材と調理にも表れる店づくりへの姿勢
多福楼では、天然の出汁を基本に、薬膳や竹炭など、身体にやさしい素材も取り入れています。
運営会社の公式サイトでも、料理の基本となるスープにこだわり、調味料についても可能な限り無添加を目指す方針が紹介されています。
「毎日でも安心して利用できる店」を目指す姿勢も、地域に根ざした店づくりの一つです。
そして、こうした姿勢は料理だけではなく、そこで働く「人」との関わり方にもつながっています。
人手不足をきっかけに始まった外国人採用
多福楼で外国人スタッフを採用するようになった最初のきっかけは、「人手不足」でした。
採用には知人からの紹介やハローワークなども活用してきましたが、思うように人が集まらないこともあり、2007~2008年頃から外国人材の採用を続けています。
現在は、日本人に加えて中国やミャンマー出身のスタッフが働き、ホールだけでなく厨房でも活躍しています。
外国人だから特別な仕事を担当するということではなく、日本人スタッフとともに日々の店舗運営を支える仲間として働いています。
言葉や文化の違いを「弱点」ではなく「強み」に
外国人スタッフと働いていれば、言葉や文化の違いから不便を感じる場面もあります。
しかし、多福楼では、そうした違いを必ずしもマイナスとは捉えていません。
たとえば、中国語を勉強しているお客様が来店した際には、中国人スタッフと中国語でコミュニケーションを取ること自体を楽しんでもらうこともあるそうです。
外国人スタッフだからこそ持っている言葉や文化が、お客様との新しい接点になることもあります。
鄭社長は、言葉などの違いについて、
「弱点も、それを活かして前向きに」
という考えを話してくれました。
違いをなくそうとするのではなく、その人が持っているものを仕事の中でどう活かすのか。
長年、多国籍のスタッフと働いてきた多福楼ならではの発想です。
日本人も外国人も「お互いに先生になる」
多福楼では、国籍の異なるスタッフがお互いに教え合うことも大切にしています。
たとえば、日本人スタッフが中国人スタッフから中国語を教えてもらう一方、中国人スタッフは日本人スタッフとのコミュニケーションを通じて、日本語の使い方を学んでいきます。
鄭社長の言葉で表せば、
「お互いに先生になる」
という関係です。
外国人スタッフだけが日本の言葉や文化を学ぶのではありません。
日本人スタッフも外国人スタッフから学ぶ。
そうした双方向の関係が、スタッフ同士のコミュニケーションにもつながっています。
小さな会社だからこそ大切にしたい「人情」
「スタッフに長く働いてもらうために、大切にしていることはありますか」
という質問に対して、鄭社長から出てきた言葉が、「人情」でした。
もちろん会社としてのルールはあります。
しかし、大企業のようにすべてを細かなルールだけで動かすのではなく、小さな会社だからこそ、一人ひとりとの関係や気持ちを大切にしたいと考えています。
スタッフが同じ方向を向き、
「共に楽しく頑張りましょう」
と思える関係をつくること。
外国人、日本人という区別以前に、一緒に働く「人」として向き合うことが、多福楼の職場づくりの土台になっています。
これは、多福楼が掲げる「お客様と従業員を幸せにする」というミッションにも通じる考え方といえるでしょう。
長年の外国人雇用から学んだ「契約」の大切さ
一方で、長く外国人材を雇用してきたからこそ、難しい経験もありました。
以前、海外から人材を受け入れた際には、外部に契約手続きを任せたことで、契約をめぐるトラブルを経験したこともあったそうです。
そこから学んだこととして、鄭社長が強調していたのが、
「最初に契約をきちんと結ぶこと」
の重要性です。
どのような条件で働いてもらうのか、どのような契約を結ぶのか。
外国人材を受け入れる際には、日本の法律や制度を確認しながら、雇用条件や契約内容を明確にしておく必要があります。
外国人材を採用することだけを考えるのではなく、安心して働き続けてもらうための土台を最初につくっておく。
実際の経験を重ねてきたからこその教訓です。
それでも、これからも外国人材と働いていきたい
これまでの外国人雇用では、言葉や文化の違いだけでなく、契約面などで苦労した経験もありました。
それでも、
「これからも外国人材を採用していきたいですか」
という質問に、鄭社長は迷わず、
「行きたいですね」
と答えました。
大切なのは、外国人だからと一括りにするのではなく、一人ひとりと向き合い、それぞれの良さを活かすこと。
そして、必要な契約や手続きをきちんと行ったうえで、同じ職場で働く仲間として関係を築いていくことです。
外国人材の採用を考えている企業へ
最後に、これから外国人材を採用しようとしている企業へのアドバイスを伺いました。
代表が伝えてくれたのは、日本語や文化の違いなどを、単なる「弱点」として捉えないことでした。
違いがあるからこそ、それをどう活かすかを考える。
外国人スタッフから日本人スタッフが学び、日本人スタッフから外国人スタッフが学ぶ。
そうやってお互いに力を出し合えば、楽しく働ける職場をつくることができる――。
人手不足への対応策として外国人材を採用するだけではなく、その人が持つ言葉や文化、個性を職場の力に変えていくこと。
2007~2008年頃から外国人スタッフと働いてきた多福楼の経験には、これから外国人材を迎えようとする企業にとって、多くのヒントがあります。
ABCネットワークより
外国人材の採用では、採用そのものだけでなく、在留資格、雇用契約、労務管理、職場でのコミュニケーション、定着など、さまざまな課題があります。
一方で、多福楼の事例から見えてくるのは、制度や手続きだけではない「人と人との関係」の大切さです。
ABCネットワークでは今後も、実際に外国人材と働いている企業・店舗の声を通じて、現場での経験や工夫を紹介していきます。

